南アフリカ共和国ケープタウン発カルチャー&ビジネスニュース

遠いようで本当に遠い国、南アフリカ。
皆様はどのようなイメージをお持ちだろうか。
槍を持って腰に葉っぱ付けてジャンプしてる?
上半身裸の男の子が象に乗ってバッファローを追いかけている?
くすんだ肌の裸のお母さんが、飢えて泣くお腹ばっかりぽっこりと出た赤ちゃんを抱きしめている?
それが半年前までの無知な私のアフリカに対するイメージの全てであった。
生来生まれ持っての好奇心、唯一の長所であり短所でもある思い立ったが吉日精神も手伝って、いっちょリアルアフリカを日本に伝えてやろうとバスコダガマ気取りで訪れたケープタウン。当初の予定では今頃埼玉の片田舎に舞い戻り、サバンナでの武勇伝を吹聴しているはずであった。
今私はここにあるレストランから就労ビザを頂き、滞在延長する事を決意した。
何だか日本では悪い噂ばかりしか聞かなかった南アフリカだけれど、実際のこの町は本当に町並み、気候、人々の心、お酒など、どれをとっても素晴らしく美しく、私はこの町を愛している。
日本で私が埼京線の網棚に置き忘れてきてしまったような事、物を繰り返し使おうとする精神、食べ物を大切にする気持ち、助け合う心について教えてくれたのもケープタウン。
そんな私の恋人であり師匠でもあるケープタウンを少しでも知って頂けたら、少しでも好きになって頂けたら、私がここで毎日とうもろこしの粉を食べて、チキンを運んでいる意義もあるはず!
日本人が思っている軽く46倍は近代的で、特にヨーロッパからの影響を受けている。
ここではお米の代わりに、フライドポテトを食べて、お漬物の代わりにフライドチキンを食べて、お味噌汁代わりに砂糖を3~4包入れたコーヒーを飲む。
何よりもびっくりしたのはマクドナルドが地名と肩を並べて公共の看板になっている事!
メタボリックとは新陳代謝のことで、太っている女性は健全の象徴。
土足でベッドの上に飛び乗ってワインを飲む事はあっても、男性でさえ週に一度の全身剃毛は怠らない。
マヨネーズはジャパニーズマヨと呼ばれ、大手百貨店でしか扱われていない民族嗜好品の一つであり、SUSHIとはアボガドをメインとしたカルフォルニアロールのことである。
ジャパンはチャイナの一部であり、同じ言語を話す。
挨拶は胸の前で両手を合わせこうべを垂れるのが正式であり、刺青を愛する。
ヤクザとは現代のサムライの事である。
グローバル化が進んだとはいえどまだまだ広く発展途上のこの地球、まぁバミューダ海域もミステリーサークルもナスカの地上絵、ピラミッドの謎だって解明されていないんだから、この程度の相互不理解は許容範囲に違いない。
でもだからこそ旅は楽しいものだし、外側から見る日本というのはいいものだと思う。
来る前までは考えてもみなかった日本の輪郭というものが良く見える。
たとえばこの前、私の今働いているレストランでカスタマーケアについての研修を受けた。その際、出席表に名前、年齢、人種をかきこまなければならなかった。
私の横のカルメンは21歳の南アフリカ人の女の子。両親はイングランドからの移民で勿論彼女毛根から足の爪先まですきとおるような真っ白。青い目と淡いピンク色の唇が印象的でファッションの勉強をしている彼女はいつもびっくりするような所に穴を開けて現れる。豆腐も恐縮するような真っ白だけれどれっきとしたアフリカ人の彼女は何のためらいもなく「WHITE」と書き、向かいのキースに渡した。
キースはジンバブエ出身の25歳。彼は数いる黒人の中でもこのレストランで特別黒い。俺はブラックというかパープルだ!黒すぎるから!!と言っている。私が紫は一番好きな色だよ!と伝えると白い歯がこぼれた。彼は本当に誠実な人だ。今まで黒人といえば夜の繁華街にたむろしている人しか知らなかったからけれど、彼はお酒、煙草もすわないどころか徹底的な菜食主義者で卵、牛乳も口にしない。平和とお味噌汁をこよなく愛し、日曜日はいつも教会にいるし、常に、私への神の加護を頼んでもいないのに祈ってくれる。流暢な左利きで「BLACK」と書き流し、横のシンディに渡す。
シンディはナミビア出身の27歳。とても美人でスタイルもよく、いつでもヘソ出しルックで現れる。唯一彼女だけが『なぜ人種を書き込む必要があるのか?』と、とても素朴な疑問を投げかけた人物であり、その言葉が表すとおり、彼女は常に公正であり、なぜ小学生のとき、うちのクラスにいてくれなかったのかと思わせるような才色兼備で思慮深いパーフェクトガールなのである。しぶしぶ「INDIAN」と書いた紙を私に手渡した。
24年間世界第二位の超大国に守られぬくぬくと自分が誰なのかも考る事すらせず育ってきた私は焦った。人種?民族??自分のルーツ???
今まで考えた事もない。日本人だということ以外何も分からない。
考え抜いた挙句、「YELLOW」と書いて講師に渡す。
だって、ジャパニーズが国籍なら黄色人種が人種なはず。
カラード(白人と黒人の混血)の先生が紙を見て笑う。
「YUKARI、本気で言ってるの?」
「この世にイエローは存在しない。あなたはアジアンよ。」
「でもわたしは自分がイエローだって教わってきた。」
負けずに言い返す。他人種に自分の人種について教えられるのは何だか悔しい。
「アジアンをイエローと呼ぶのはアメリカ人だけなのよ。」
先生は言う。
その言葉から勉強嫌いな私でもイエローは差別的な意味合いを含むものなのだと分かる。
「はちみつだって、ひまわりだって、レモンだって、太陽だって体にいいものは全部黄色なんだから!黄色は素敵な色よ!」
「海苔もゴマもビネガーもしょうゆだってとびっきり体にいいと思わない?」
とキース。
日本食を愛する彼らしい意見だ。
「お豆腐と、お米、チーズがなかったらYUKARI生きていけないんじゃない??」
カルメンの口の中で真新しいピンクの石がきらりと光った。
結局その日はあまり勉強は進まず。
人種の坩堝ケープタウン。カスタマーケアの他にもまだまだ勉強する事はありそう。
たまに衝突する事はあっても、みんなそれぞれの民族、人種、文化に誇りを持っている。
人がいて、価値観があって、それを共有できる言語があれば、いつかきっとピラミッドの謎どころか宇宙の果てだって見えるはず!

宮城ゆかり
1985年9月6日生まれ / 埼玉県出身
山崎豊子さんの二つの祖国に感銘を受け法律に興味を持ち、法律家を志すもあっさり挫折。かろうじて大学卒業後、OLになるものの一年で挫折。類い稀なる健康体で小学生以来風邪も引かず、虫歯もなく、チャレンジ精神が旺盛なのが取り柄だが先読みが足らず後悔することが大半。
ケープタウンが大好きだけれどおばあちゃんの冷や汁も恋しいと思う24歳。
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(最終更新: 5月 17 日 15:35)