【宮城ゆかり的膝栗毛】 ケープタウンの人間交差点

宮城ゆかり的膝栗毛

 水曜日といえば

 ロングストリートのCHROMEに全員集合!

 何故ならそのクラブで午前零時までテキーラ、アップルサワーがワンショット1ランドなのである。
 だから毎週水曜日はいつでも超満員。白も黒もカラードも男も女もみんな朝まで踊り狂う。

 アフリカ人は本当にみんな音楽を愛していて、街中で突然踊りだす、歌いだす、は日常茶飯事だし、この前も何の気なしに鼻歌を歌いながら道を歩いていたら、恰幅の良いジェントルマンに突然両腕をわしづかみにされ、あ、喜望峰あたりに捨てられる・・・と、本気で人生の走馬灯を見たところ、最近習いだしたというご自慢の軽やかなサルサのステップをその場で披露された。

 平日の昼間から声高らかに陽気な歌を口ずさむアジア人の女の子を見たらつい自慢したくなったんだと、帽子まで脱いで快活に謝って頂いたら、なんだかそんな紳士のパートナーに選んでいただいて光栄ですと、こちらの方が恐縮してしまった。

 また一緒に踊って下さいねといい、軽快に立ち去るその背中に南アフリカ人の町民性を見た気がした。でも、彼らはいつでもそう。常にフレンドリーで明るくてポジティブ。明日は明日の風が吹く!を地でいく21世紀の寅さんみたいな人が沢山いる、素敵な町なのである。

 また、私のいきつけのコンビニの店員さんはいつでもごきげんに歌っている。彼女は黒人独特の深みのある声でいつでも流行のR&Bを美しく歌い上げる。それが音痴の私には羨ましくてたまらず、半年通い続ける今も変わらず、私を魅了して他のコンビニに足を運ぶ事を許さない。

 一小節終わるまでおつりが返ってこないとか、運ばれてきた牛乳やパンがいつまでたっても入り口近くに山積みになっているなんていう小さな欠点はこの際全く気にならない。彼女は美しい音色を奏でるのに忙しいのだから。しかし、なぜ黒人は皆あんなに美しい声を持っているのであろうか。

 ケープタウンでよく見かけるゴスペラー。今までゴスペルといえば、教会で賛美歌をバックに恰幅の良い女性が歌っているイメージしかなかったが、こっちでは男性のゴスペラーが主流。いつでも10人前後のグループで、テーブルマウンテンを望む美しいケープタウンのいたる場所をステージとし、活動している。女性にはない地を割くような太くて深い、深い、良く伸びる声が生み出す美しい音色を美しいと思うのは、全人類共通のようで、いつでも十重二十重に色とりどりの肌の人の輪が出来ている。

 ケープタウンにお立ち寄りの際は是非探してみて頂きたい。少なくとも、ウォーターフロントに行けば必ずといっていいほどの確率で出会えると思う。

 話は反れたが、アフリカ人が音楽を愛しているというのはご理解頂けたであろうか。
 そんな彼らだから水曜日の夜の熱気といったら八月の江ノ島もひっくり返るような騒ぎなのである。日本のクラブみたいにただカクテルを飲んですましてるとか、女の子のお尻ばっかり見てるなんて輩は一人もいない。汗だくになって、過ぎ行くこの夜を惜しむように全力で踊る。踊る。踊る。時々叫ぶ。
 
 もちろん、かわいい女の子へのアプローチも忘れない。気前良く1ランド(約12円)のテキーラをおごり、ダンスフロアへと手を引く。情熱的に腰をくゆらせ耳元で名前の交換をする。

 文化は違えど、人種は違えど、そのあたりは寸分違わない。かくいう私も随分そこにはお世話になっていて、いつでも記憶という代償を払い、二日酔いという手土産を頂く。

 それでもまた足が向いてしまうのはやっぱり楽しいから!
 止めどなく溢れ出す笑い声、フロアに染み渡る音楽と香水とテキーラの匂い。
 体が覚えている。あの空間を、あの夜を。
 また、ケープタウンは小さな町だからそこに行けば必ず誰かに会える。
 久しぶり!元気してた!?から始まり、
 これ、私の友達の○○君!とくれば、
 一緒に踊ろう~!遊びに行こう~!!に落ち着く。

 また、一緒に働こうよ!という有り難いお話もちらほら。
 そういえばストリップクラブでのバーテンダーの仕事を見つけたのもここ、クロムでだった。
 ルンギがスイス人の彼氏を見つけたのもここらしい。そして彼女はつい先週スイスに旅立った。
 南アフリカ人がスイスに移住するには手続きが煩雑すぎてうんざり!とぼやきながらもまだ見ぬ新天地に思いを馳せる彼女の横顔は今までいちばん綺麗だった。

 ケープタウンの人間交差点、クロムであなたも誰かと人生の青信号を灯してみては!?


少年とSavanna Dry  W杯組み合わせ抽選日の夜、街にはバファナバファナの黄色をまとった人々で溢れた。
(左)少年とSavanna Dry
(右)W杯組み合わせ抽選日の夜、街にはバファナバファナの黄色をまとった人々で溢れた。


著者プロフィール

宮城ゆかり宮城ゆかり
1985年9月6日生まれ / 埼玉県出身

山崎豊子さんの二つの祖国に感銘を受け法律に興味を持ち、法律家を志すもあっさり挫折。かろうじて大学卒業後、OLになるものの一年で挫折。類い稀なる健康体で小学生以来風邪も引かず、虫歯もなく、チャレンジ精神が旺盛なのが取り柄だが先読みが足らず後悔することが大半。
ケープタウンが大好きだけれどおばあちゃんの冷や汁も恋しいと思う24歳。
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(最終更新: 5月 27 日 0:24)



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